月刊BLUEBNOSE 2024年07月号(#7)『Webマーケティングは諸行無常かつ不易流行』

Web制作やWebマーケティングをやっていると、「私も知ってる」や「私も詳しい」といった、耳年増なお客様もたまにいらっしゃいます。
巷の噂や流行り廃り、著名なマーケター等に乗っからない方がいい理由、なぜお決まりの定型パターンではダメなのかについて、ざっくり解説します。
BLUE B NOSE 2024.07.19
誰でも

「Webマーケティング、SEOなら私も知ってる」とか、「最近書店で見た〇〇さんのXXをやれば、成功するんでしょ?」とか、「私も経験者だからよく分かってる」とか。Webサイト制作をやっていると、お客様やお客様の周囲にいる人から耳にする事も珍しくないフレーズ。

書店や図書館へ足を運べば、ちょっと古いものから新しいものまで、「何とかマーケティング」と題した書籍や、主に大手や有名な企業を中心とした成功事例、ケーススタディが掲載されている書籍も沢山並んでいます。

しかし、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」と肥前国平戸藩の藩主、松浦静山が語ったり、プロ野球の故野村克也監督がよく言われていた言葉があるように、事業やマーケティングの世界でも「不思議の勝ち」があり、上手くいって当然だったやり方もあれば、たまたま上手くいっただけの手法も沢山あります。

物事の因果関係や相関関係を取り違えたり、ただのトレンド、時の運だっただけの取り組みに注力してしまうと、取り返しのつかない「負け」に陥るかもしれません。

腰を据えてじっくり取り組まなければならないWebマーケティングや、ペルソナ、カスタマージャーニーを活用した関係構築など、ちょっとの間違いがとんでもない大失敗に繋がりかねない取り組みにおいて、事実誤認や戦略の誤りは極力避けたいものです。

今回は、Webマーケティングを見極める難しさやその諸行無常さ、不易流行について改めて考えてみましょう。

前提が揃っていないと、そこから先もズレてくる

先行している成功事例や、誰かが提唱している「何とかマーケティング」を参考にする場合、最初に気をつけたいのは「前提条件が揃っているか」です。

似たような業界、似たような商材を取り扱っていても、取り扱っている事業者の知名度やブランドの浸透度合い、商品やサービスそのものの質、事業体としての体力やリソースといった強み、時代性や時流といったもの、更に偶然や運といった要素も絡まり合って、勝ちや成功に繋がっています。

すでに成功を勝ち取っている事業やブランド、大きなシェアを占めているサービスというのは、アナタが今から始めよう、あるいは広めようと思っている商品やサービスより、何かの面で優れている、あるいは凌駕している可能性は全くないと言えますか? 恐らく、「ノー」でしょう。

今日の強者は、やはり強者たる所以がしっかりあります。最初は弱者であっても、弱みを塞ぐようにどんどん全方位的な強さを獲得しつつあるでしょう。そこへ対して勝負を仕掛ける以上、ある一点、あるいは部分的に優っていても、基本的には劣勢に置かれているという自覚、客観視は必要です。

裏を返せば、事業体の認知やブランドへの信頼が確立されていたり、商品やサービスが非常に良いものであれば、適当なマーケティング、ブランディングでもそれなりに上手くいく、どれだけ下手なマーケターが適当なことをやっても、そうそう失敗しないとも言えます。

ある程度上手くいく見込みがある商品やサービスだけを選んで、自分たちの得意なパターンへ落とし込み、それだけを繰り返して成功事例を積み増しているように見せかけている事業者も、ないとは言えません。アナタが「真似しよう」と思ったそのマーケティング手法、本当にマーケティング手法だけで成功したやり方でしょうか? それをマネても良い商材でしょうか?

自分たちの商品やサービスが本当に良いものなのか、オペレーションやリソースに一点の不備もないかどうか。一度冷静になって客観視し、どこかに思わぬ穴がないかテストしたり、小さな練習、訓練を課して誤魔化しが効かない部分を強化しておくことをオススメします。

マーケティングのマーケティング、ブランディングのブランディングという可能性もある

筆者が昨今の書店を好きになれない理由でもありますが、著者や著者が所属する組織、サービスのマーケティングやブランディングの一環として、「何とかマーケティング」の書籍を商業出版に繋げている可能性も十分あります。

そのマーケティングやブランディングを成り立たせるために、書籍で取り上げられている「何とかマーケティング」じゃない部分も動員して、無理やり成功を装っているインチキや詐欺に近いケースもないとは言えません。

また、かつては正解に近いと思われていたマーケティング、ブランディングの手法も、時代が進むにつれて「ただの勘違い」になる場合もあり、あまりにも刊行ペースが速い著者や、著者の近影が表紙や帯に掲載されている場合、あまりにも過激なタイトルがついている等の場合は、眉に唾をつけて紐解いた方が良いように思います。

本当に実証されていて、再現性があるマーケティングやブランディング手法なのか。本当に信じて良い情報なのか、見極めるリテラシーも培っていただけたらと陰ながら願っています。

誰かのサクセスストーリーや成功事例も諸行無常

もしアナタが特定のブランドや著名人の猛烈なファンだったとして、そのサクセスストーリー、紆余曲折ある物語性も好きだから追体験したいと模倣するのも、避けた方がいいでしょう。

あるいは数年前に流行った事例や、「私が知っている方法」をそのまま踏襲するのもオススメできません。「勝ちに不思議の勝ち」はあっても、負ける時に「不思議」はないので。

端的に言えば、「時代が違う」からです。時代が違えば市場や世間、消費者一人一人の習慣や価値観も変化します。「当時は許された」こともあるでしょうし、前提も変わる上に、「ウケるかどうか」も感性が移ろいゆく以上は、「いつでもウケる」保証はありません。

いわゆるYoutuberやニコニコ動画でのボーカロイドプロデューサーに今から挑戦するとして、始めた当時のヒカキン氏や米津玄師氏のやり方を模倣しようと思っても、才能等の前提が違うだけでなく、プラットフォーム側の仕様変更や、プラットフォームを取り巻く環境の変化、情勢の変化というのも関わってきます。

「私がかつて聞き齧ったこと」をそのまま使わない方が良いのも、同様の理由です。

アナタがその知識を仕入れたのは何年前ですか? Web制作やWebマーケティングの世界は変化が非常に早く、二年前でそのまま通用するかどうかギリギリのライン、一年半や半年前の情報で鮮度がいい方、最新、最先端は昨日とか一時間前というのもザラな世界で、その知識が本当に機能するのか、市場やユーザーにウケるのか、客観的にどう思います?

誰かのサクセスストーリーも成功事例も、時代や時の運も相まって成立した「不思議な勝ち」であり、それが常に上手く行く保証はできない、いわゆる「諸行無常」の存在です。様々な要因で揺れ動く無常、永遠不変ではないのだから、「不思議な勝ち」を盲目的に真似する、そこに拘泥するのは、大失敗する危険性も孕んでいるとご理解いただきたい。

セオリーや原理原則、専門家の経験や勘を軽視して上手くいった事例は稀

無常なものに拘泥、依拠しないとなると足がかりとすべきなのは不変のもの、不易流行の「不易」の部分、無常と同様に仏教の用語から引用するなら「法」に相当する部分です。

市場や業界を過去から未来まで貫く伝統や原理原則に近いセオリー、あるいは作り手側が培ってきた経験や感性に基づく勘に逆らって、クライアントがやりたいことを優先した結果、失敗した事例、上手くいかなかった事例を沢山見てきました。

勝ちや成功に「不思議」はあっても、負けや失敗に「不思議」はない。

「コレをやれば上手くいく」は運試しになることがあっても、「コレをやらないと失敗する」に運不運はなく、ありもしない願望へ思いを馳せる暇があるなら、今すぐできること、自分が影響を及ぼせる範囲のこと、為すべきことを面倒臭がらずにやろう、話はそれからだということです。

運を手繰り寄せてチャンスを掴みたいなら、やれるだけのことをやる。凡事徹底、努力を積み重ねて自分を目一杯高めておく。誤魔化しが効かない部分を鍛錬し、目立たない部分を磨き上げる。その上で、専門家の意見を聞いて、「流行」の部分、自分たちがやりたいことを活かすようにする。

Web制作やマーケティングの事業者側の意見だけを貫いても、クライアントやエンドユーザー、市場や業界、商品やサービスへの理解や配慮が足らずに失敗するケースも沢山見てきました。双方のセオリーや原則、経験や勘を持ち寄って二人三脚で時代や市場に合わせたマーケティングを仕掛けなければならない。それが今の時代、特に健全的な考え方だと思っています。

持続的に勝ち続けるためには、嘘や誤魔化しはNG

最大瞬間風速的に、極めて短い期間に莫大な売上を上げて逃げ切りを図るのならどんなマーケティングでも構わないと思いますが、常に勝ち続ける「常勝」や持続的な成功を目指している場合、正しいやり方で真摯なマーケティングを選択しないと、どこかのタイミングで小さなミスが取り返しのつかない致命傷となってしまう可能性があります。

一瞬の「勝ち」に「不思議の勝ち」はあり得ても、「常勝」を続けるためには「不思議の勝ち」に頼り続けても上手くいきません。勝って当たり前、上手くいって当たり前の状態を自分で作り、それを維持、向上させるようにしなければ、持続的な成功は成し得ないでしょう。

続ければ続けるほど、商品やサービスの瑕疵やオペレーションの至らない点、取り繕いや誤魔化しで何とかしてきたネガティブな要素が少しずつ露呈し、隠しきれなくなってきます。その時、都度正直に修正、訂正し続けるのか、ネガティブなものをそのままに、河岸や身元を変えて続けるのか。

市場や顧客に対して誠実かつ真摯に、為すべきことを為して堂々と振る舞う。小手先の流行りや応用技だけでなく、基礎的な体力や基本的な技に磨きをかける。

どこにも隙を作らず、盤石な体制、土台を構築すれば、足元を固めて次の勝負にも打って出られます。

なぜ上手くいっているか分からない時流に乗った流行りのマーケティング、ブランディングではなく、間違いのないマーケティング、失敗が考えにくいブランディングを選択し、時間を参入障壁に真面目にコツコツレベルを上げる。

差別化が伝わりにくい商材やサービスでこそ、華やかさのない地味な取り組み、時間をかけた手法が功を奏するというのが、BBNの考えです。

クライアント、エンドユーザーに合わせて、やり方から考える

低価格帯のWeb制作サービスやマーケティング支援サービスにありがちな、「お決まりのパッケージ対応」はBBNではご用意していません。

BBNの取り組み方として必要となるWebサイトはそれほどパターンは多くないからと、ベースキットとなるパターンオーダーなボイラープレート、デザインシステムは準備していますが、BBNがコレまで培ってきた経験や、業界のセオリー、原理原則を踏襲した上でクライアントごと、エンドユーザーごとにどんなマーケティング、ブランディング施策を取るべきか、常にゼロから考えるようにしています。

規定のパターンや成功させるための条件、判定基準等も設けておらず、「〇〇でないから出来ない」とか「上手くいくイメージができない」といった判断もありません。

許認可業やその他法令の関係で差別化が難しいとか、取扱商材が特殊、あるいは逆にコモディティ化していて差別化、伝え方が難しいとか。そういったお客様でも、何とか上手くいく方法がないか、一緒に膝を突き合わせて考えるというのも、大歓迎しております。

初めてで不安な方でも、BBNがこれまでの培った経験や知識を使って、最適なマーケティング、ブランディングを支援します。華やかさな戦略や戦術ではなく、地味なセオリー、ロジスティクスや継続性を重視した取り組みをご提案するBBNと、Webサイト制作やWebマーケティングに取り組んでみませんか?

おしまいに

Webマーケティングの諸行無常さ、不易流行の大切さを理解しているBBNと、本格的なコンテンツマーケティングを中核としたWeb制作、Webマーケティングはいかがでしょうか。

また、もしこの記事が気に入ったという方は、ぜひ当ニュースレターのフォローやメールアドレスのご登録をよろしくお願いします。

月刊BLUEBNOSEは、毎月1回、第三週の週末に配信予定です。当配信の感想やご質問などございましたら、#BLUEBNOSEか@bluebnoseをつけて、SNSにご投稿いただけますと幸いです。

また、noteやHP上のブログ、Substack等でも情報を発信しておりますので、そちらもぜひチェックしてみてください。

それでは、次回の配信をお楽しみに。

無料で「BLUEBNOSE's theLetter」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年08月号(#8)『頑張りすぎずに結果...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年06月号(#6)『オモロイ話は、ウル...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年05月号(#5)『言葉とは、刃渡のな...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年04月号(#4)『「愚者」に寄り添う...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年03月号(#3)『Webサイトはバッ...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 2024年02月号(#2)『境目が溶けゆく世界...
誰でも
月刊BLUEBNOSE 創刊号(#1)『BLUE B NOSEは、BL...