月刊BLUEBNOSE 2024年11月号(#11)『投入資金の閾値を超えないと、Webサイトは役立ちにくい』

Webサイト制作やWebマーケティングにおける厳しい現実と、何故そうなるのかについて、筆者の経験を元にざっくり解説。また、何故今のサービス体系になったのか、どんな想いを込めたのかも語ってみました。
BLUE B NOSE 2024.11.15
誰でも

BLUE B NOSE(以下BBN)は、月額定額制のいわゆる「サブスク」スタイルを採用したWebサイト制作サービスです。イマドキのスタイルだから選んだように思われそうですが、十数年の制作経験や様々な紆余曲折を経て、現在の形に辿り着いています。

予算や納期が十分ではない案件や、ディレクターやクライアントの窓口の印象がイマイチだった案件、納品や修正、工程管理をめぐってトラブった案件など、良くなかった思い出や経験に対するアンチテーゼを暗中模索した結果、導き出されたスタイルなのですが、出来上がった結果だけを見ると没個性的に見えるかもしれません。

今回は、厳しい案件と向き合いながら見えてきた事実や、なぜ今の形を捻り出したのかについて、他の媒体では言及しにくいところも含む部分ですが、ここではあえて取り上げてみましょう。

Webサイト制作の費用 = 人件費

他のサービス業やシステム開発などのプログラミングにも通じる話ですが、これから取り上げる話題の前提として大事なことなので、改めて言及しておきます。Webサイト制作(と、運用も含めた場合)の費用というのは、ほぼ人件費です。

見積もりや請求書の上では、様々な内訳が記載されていて、「そんな費用になっても仕方がない」とご納得いただきやすいような数字を列挙してありますが、実態は対象となる仕事量と、それをこなすために必要な人員、人工(にんく)がどれだけなのかを勘案して導き出された人件費です。

経験や確かなスキルを持つエース級の人材を投入しようと思えば費用は嵩みますし、デザインもコーディングもできる人材を一人だけ用意するのか、デザイナーとコーダーとで二人分投入するのかでも費用は変わってきます。出来上がったWebサイトのクオリティや、そこに導入できる機能やマーケティング施策の質や選択肢も、大きく変化します。

「ちょっと試しにWebサイトを作ってみたいだけだから」と予算を抑えてしまった場合、予算相応のWebサイトが出来上がります。極端な例を挙げるなら、外注せずに自分で無料のツールを使ってWebサイトを作ってみたとしましょう。よほどのセンスや技術がない限り、完成したWebサイトは散々な仕上がりとなります。

最近の無料ツールはかなり優秀なので、それなりの品質も期待できますが、制作に費やす時間やSEO対策の労力、ビジネスオーナー自身の「見えない人件費」も考慮した場合、とても「安い」とは言えません。

いわゆる「安物買いの銭失い」に陥りやすく、予算を抑えれば抑えるほど、エース級からは程遠い人材しか導入できなくなります。本来必要だった人材は外され、デザインかコーディングのどちらかしか出来ない人材が一人で全て対応するという可能性も出て来ます。

紙媒体にも強いデザイナーや、映像まで対応できるカメラマン、コピーライティングが得意なライターといったスペシャリストを加えられれば、単に「Webサイトを作る」という目的を超えた、幅広い成果や施策も期待出来ますが、人材を一人、また一人と削らざるを得なくなると、Webサイトやそのビジネスが持つ可能性も次第に縮小していくことでしょう。

制作費用を抑えすぎると、予算に見合ったWebサイト、もしくは期待以下の仕上がりにしかならない。

制作費用の実態がほぼ人件費である以上、避けられない事実です。

初期費用を抑えられても、ランニングコストが嵩む

友人知人の伝手で上手くいったり、駆け出しの個人クリエイターが営業も兼ねてポートフォリオやモニターとして安くしてくれるなど、幸運で初期費用を抑えられるかもしれません。最近は、Webデザインやプログラミングの副業を勧めるスクールも活況で、こういう事例も珍しくはないでしょう。

ただ、目の前のWebサイトにいくらかかったのかは、訪問するユーザーには関係のない話。超一流のWebデザイナーや大手制作会社が手掛けたとか、SEOの専門家が携わっているか否か、どれだけ表示速度や内部SEOにこだわったかも、微塵も伝わらないでしょう。

トップシェアの企業が大手制作会社に依頼して作るWebサイトと、あなたが偶然安く作れたWebサイトは、ユーザーには全くの同一条件で比較されてしまいます。予算を抑えたとして、果たして勝負になるでしょうか?

また、これは同じ土俵に立っているという前提が隠れています。

実際には、初期費用を抑えたWebサイトというのは、大型ショッピングモールや大手スーパーの棚ではなく、人通りの少ない田舎道の無人販売所に出品するようなもの。自宅の軒先で手書きの値札と簡易の集金システムで陳列した商品に、どれだけの人が気付いてくれるでしょうか。

無人販売所がどこにあるか、人通りの多い場所へ案内を出したり、近隣にチラシをポスティングしたり、販売所の近くでは、さらに詳細な道案内や積極的な客引きといった工夫が必要になります。

結局、人通りの多い好立地に出店するのと同程度の費用やビジネスオーナーの苦労が必要になり、パッケージングや見せ方についても、大手と同等の品質でないと、ユーザーの満足は得られないでしょう。

つまり、初期費用を抑えてWebサイトを作れたとしても、公開後のランニングコストが嵩んでしまい、ビジネス上の目的を果たすためには、一級のWebサイトと同程度の投資が必要になるということです。

ディレクターとデザイナー、もしくはコーダーの二人で構成する案件の場合、費用の目安は30万円前後。デザイナーとコーダーに加えてフロントエンドエンジニアを加えた三人から四人体制でCMSを導入すると40万円から50万円ほど。そこに、カメラマンなどの外注を加えた場合で60万円から80万円ほどが相場でしょうか。総額でおよそ100万円前後が「役に立つ閾値」の目安となります。

つまり、制作費用のみか、制作費用とランニングコストの合計がこの目安を超えなければ、「役に立つ」レベルのWebサイトには到達しない。それも揺らがない事実だと考えています。

十分な予算を投入しても、回収できるかは不透明

「役に立つ」Webサイトを目指すには100万円前後の投資が必要とお伝えしましたが、現在は、十分な予算を用意して必要な人材を揃えたプロジェクトを進めたとしても、投資した金額を確実に回収できるとは言えない状況です。

決して安い投資ではないので、制作者サイドとしても回収を目指して全力でコミットメントしたいところですが、残念ながら元本保証というか、お約束をするのは難しいというのが正直なところです。

WixやJimdoといった無料サービスが充実し、SNSだけでマーケティングを完結させることも可能になった昨今、100万円の予算が本当に必要なのか、という疑問を持たれるのも無理はありません。また、今の経済状況で「捨て金になるかもしれない」と知りながら、高額な投資をお願いするのは心苦しい部分があります。

ビジネスの成長に欠かせない販管費であることは確かですが、成功の確証も乏しいまま、致命的な出費になりかねない投資をお願いすることはできません。

そこで、諸々の問題を解決しながら提供可能な方法はないかと模索した結果、費用をグッと抑えた月額定額制を導入し、「使ってもらいながら費用を回収し、役に立つ閾値まで投資していただく」のはどうだろうか、と捻り出したのが今のスタイルです。

100万円を投入して、立派なWebサイトを作って出たとこ勝負に出るのではなく、100万円分を段階的に費やしながら、アクセス分析を積み重ねて施策やサイトの見せ方・伝え方を改修し、データドリブンとペルソナマーケティングを活かした、本当に必要なWebサイトへ育てていく方法です。

公開直後を価値のピークにするのではなく、時間の経過と共に複利効果やエイジング効果を期待する。BBNが辿り着いたのは、パターンオーダーから始めるビスポークのように、試行錯誤しながら唯一無二のWebサイトを作っていく独自のアプローチです。

パターンオーダーとデザインシステムで工数圧縮

少数精鋭の質の高いスキルを持つ多芸な人材が、ここまで掲げて来た道理を多少無理して力技で捻じ曲げ、若干の自己犠牲を払うことで成立させている、他では誰もやるはずがない方法です。自分たちがお金を払ってでもやりたいことだから、という理由も持ち出して納得していますが、利益は本当に微々たる物です。

さらに、制作者としての経験をギュッと詰め込んだ広義のテンプレート、デザインシステムを構築し、納品やサイト公開からサービスを始められるように、複数のパターンオーダーもご用意しています。

WordPressを使った現代のWebサイトとして、BBNオリジナルの独自テーマには、必要な機能は十分に組み込まれており、高速表示や十分な内部SEO、構造化マークアップも完備されています。パターンオーダーから色やアイコンを差し替えるだけでも、通常のWebサイトよりも高品質なものをご提供できます。

事前に必要な機能や要素を厳選し、対応可能な範囲を絞ることで、低価格と高品質の両立を図っています。予算や工数を圧迫しがちな本格的なデザイン工程は後回しとし、まずはPDCAサイクルとOODAループを回すためのWebサイト公開を最優先としています。

机上の空論やいわゆる「自転車置き場の議論」に付き合うことなく、データドリブンな環境でのペルソナやカスタマージャーニーの検証、有効な施策の見極めへ移行することができ、時間や予算の無駄遣いの回避に繋がっています。

従来通りのウォーターフォール型のままでは工数の削減が難しく、納品の際に修正や確認が相次いで公開が先延ばしになる事例もありましたが、一連のプロセスを見直して大胆に組み替えることで、今の時代に合った手法が確立できるのではないか、という思いで取り組んでいます。

Webマーケティングを諦めてもらいたくないし、希望や可能性も残したい

「100万円ぐらいは投資しないと効果が期待できない」というのは、今も変わらない目安だと思っていますが、それが良いことだとも思っていません。だからこそ、本来はどうにもならないはずの道理を捻じ曲げ、多少の自己犠牲も厭わず、価格を抑えた月額制のサービスを提供しています。

「100万円も投資できないから」と、Webサイト制作やWebマーケティングを諦めてしまう方や、「大金を投じたところで上手くいく保証もない」と感じている方もいらっしゃるでしょう。今のWebマーケティングに、期待も希望も持てないのも仕方がありません。

「Webサイトを作りさえすれば、何とかなる」とは言えませんし、「SNSに力を入れれば、Webサイトは要らない」とも断言できません。それでも「Webマーケティングには希望や可能性がまだまだある」とは言いたいし、実際に期待や希望が持てるんだと示したいじゃないですか。

だから、BBNは破綻しているように見える価格設定とビジネスモデルであっても、「これをやりましょう」と提案します。普通なら無理に思えることでも、できる可能性が1%でもあるのなら、持てるスキルや経験を投入して、全力でコミットします。

Webサイト制作やWebマーケティングも、「投資をするだけの価値がある」と実感していただき、少額の投資をきっかけに、ビジネスや生活が変わる可能性を感じていただく。明るい未来を切り拓くための一つの選択肢として、今後も日々精進しなければと思っています。

「一世一代の大勝負」ではなく、長い時間をかけて試行錯誤や仮説検証を繰り返し、投資として確度の高い「日常の一コマ」として、Web制作やWeb活用をお手伝いする。無理なく続けるため、持続可能なWebマーケティングをオススメしています。

おしまいに

今までのやり方では、巨額の投資は避けられないし、投資を回収できるかも不透明です。

BBNは、Webサイト制作やWebマーケティングを投機ではなく、投資にする方法がないか、日々の取り組みを通じて模索し続けています。

少額投資によるSDGsの実現を目指すBBNと、Web制作やWeb活用に取り組んでみませんか?

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それでは、次回の配信をお楽しみに。

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